ぜひED治療薬をもらう前に考えていただきたいこと
最近巷では、治療薬をいかに安くかつ短時間で処方可能であることを、強調した広告をしばしば見かけます。私が医師となった当時はまだインポテンツと言われておりましたが、EDという言葉が広く認知されるようになり、患者様のED治療に対するハードルが随分さがりました。
EDの原因としては、身体には異常がなく、心理的な原因が約8割を占め、2割が血管性の障害、神経の障害が原因とされており、後者は糖尿病が主たる原因です。
原因がなんであれ、薬が効けばそれで良いし、安ければなお結構という考えも成り立ちますが、診断というステップも重要と思われます。いまや安さを追求するのであれば、インターネットで医薬品が買える時代ですが、偽物も多く、リスクがあります。
診断は、徐々にだめになったのか、何らかのきっかけがあったのか、いままでの病気や手術ないかなど、常備薬は何かなど患者様に問診するだけでおおよそ、どういうタイプのEDなのか、薬が効きやすいか見当がつきます。
尿検査だけでも尿糖のチェックだけで重症な糖尿病を発見するきっかけになったりもします。つまり受診時に簡単な検査をするだけで、糖尿病のためにEDになっているのに、糖尿病を放置してED薬を飲むというおかしな事態を避けることができるのです。
また、50才以上の中高年層の患者さんでは、前立腺の肥大はないかチェックすることも重要ですED以外に排尿の症状はないか(勢いがない、トイレに夜何度も起きる、終わったあとキレが悪いなど)を下部尿路症状といいますが、前立腺肥大とEDはとても関連深く、治療によりおしっこの症状が良くなると、EDが治ることもよくあります。
前立腺の検査は、痛みもなく超音波検査や勢いを測定することでわかります。もちろん保険がききます。現在では前立腺肥大症のお薬が良く効くので、肥大症の治療をすることで、おしっこも快調になり、勃起力も回復しED治療薬を飲む必要がなくなる人がたくさんいます。
EDと前立腺肥大症のある患者さんのお薬にはタダラフィル(ザルティア)が最適と思われます。ザルティアは商品名が異なるだけでED薬シアリスとまったく同じ成分です。量の規格が異なるだけです。保険が効きますし、EDが気になる前立腺肥大症の方には良い適応です。
また、男性更年期の症状のある方は、うつ症状もあることが多く昔からうつとEDは関連が深いと考えられてきました。血液検査で男性ホルモン値が明らかに低い時に男性ホルモンを補充すると、倦怠感ややる気のなさ、うつ症状が改善し、その結果、朝立ちがよみがえり、EDがなおる方がいます。
脳腫瘍によるホルモン異常の結果、男性ホルモンが低下し結果として、髭や体毛が薄くなりEDになります。わたしの経験では、下垂体腫瘍の治療後EDはなおっています。(治療時期が遅れると戻らないこともありホルモン治療を継続します)
常用薬による薬剤性ED
高血圧、胃薬などよく処方される薬が意外にもEDの原因であることがあります。医師の間でもあまり知られていない落とし穴です。該当する薬を飲んでいる患者さんは、別のお薬に変更することでEDがなおる場合があり、ED薬を飲む前にチェックしておきたい項目のひとつです。
以上、ED治療薬を処方する前にわたしが考えているポイントを上げました。
もちろん患者さんの症状を伺った上で、ケースバイケースで必要な検査をおすすめします(お話だけのときもあります。)
意外とEDの診断には時間がかかるものであり、奥が深いものなのです。
普段かかりつけの医療機関があり、定期的な採血や人間ドックを受けている方は大きな問題はないと思いますが、しばらく検査を受けていない方は、ED薬をはじめる前に最低限のチェックを行いましょう。
ED薬のネット通販は、偽薬が多くやめておきたいものです。
EDの原因となっている病気に気づかずにED薬をつづけるようなことがないようにしてください。
日本性機能学会専門医として、適切な診断・治療をご提案させていただきます。
新橋日比谷通りクリニックお気軽にご相談ください。
ED(勃起不全)とは
EDとは、『Erectile Dysfunction』の略であり、日本語では『勃起障害』や『勃起不全』と訳され、勃起機能の低下を意味しています。
最初から最後まで完全に勃起しない場合だけでなく、勃起に時間がかかったり、性行為の途中で勃起状態を維持できなくなってしまったりする場合も、EDの疑いがあります。硬さが不十分である場合もEDに含まれ、EDとは、「性交時に十分な勃起や、その維持ができず、性交を満足に行えない状態」と定義されます。
マスターベーションは可能であるが、女性の膣内では射精できない場合も男性性機能障害です。
EDが疑われる症状
- 性的興奮を覚えているのに勃起しない
- 自分の意思に反して、勃起するのに時間がかかる
- 勃起しても、十分に硬くならない
- 性交中、徐々に硬さを失っていく(中折れ)
中折れとは、性交中、勃起して挿入するものの、行為の途中で少しずつ萎えてしまうタイプのEDで、40代以降の男性に多く見られます。勃起することはでき、挿入も可能であることから、EDの自覚がないケースも多いです。
性機能の衰えは、男性の自尊心を深く傷つける問題であり、「自分がEDであること」を自覚するのは、時に難しい場合があります。しかし、EDは治療によって改善する可能性のある疾患です。
「最近性行為が上手くいかない」、「もしかしてEDかも…」と思われた方は、当院までご相談ください。新橋日比谷通りクリニックでは、日本泌尿科学会専門医・日本性機能学会専門医でもある院長がED治療を行っています。新橋駅より徒歩4分、平日だけでなく土曜日も20時まで診療しておりますので、お仕事帰りなどにもお立ち寄りください。
EDの原因
加齢に伴いEDの人の割合は増えますが、EDの原因は老化だけではありません。EDには、大きく分けて三つの原因があります。
心因性ED
心因性EDとは
ストレスや不安、うつ状態などの心理的要因は、しばしばEDの原因となります。心因は、パートナーとの不仲や仕事の重圧、過労などの現実心因(現実の日常生活で起こっているストレス)によるものと、日常生活に大きなストレスは無いものの、幼児期の体験やトラウマなどの深層心因(心の深層にある原因)によって起こるものの、二つに大別されます。
心因性EDは、うつ病との合併も多い疾患です。逆に、基礎疾患にうつ病があり、うつ病からEDになるケースもあります。
器質性ED
器質性EDとは
血管や神経の障害など、体の器質的な異常による勃起障害を、器質性EDといいます。
脳から性的興奮の信号が陰茎に伝わると、陰茎海綿体と呼ばれるスポンジ状の組織に、血液が一気に流れ込み、それによって陰茎は勃起します。血管自体に動脈硬化などの異常があったり、神経障害によって脳からの興奮が陰茎に伝わりにくかったりすることにより、勃起障害が起こります。
器質性EDの原因
- 加齢…年齢が上がり、血管や神経が徐々に衰えてしまうことによるもの
- 生活習慣病…生活習慣病は動脈硬化を合併しやすく、EDの原因となりやすい
- 神経系の障害…脳出血や脳腫瘍などにより、自律神経障害を起こすためEDとなる
- 手術、外傷…骨盤内手術(直腸、前立腺、膀胱など)の後遺症によりEDとなる
- その他の疾患…前立腺肥大症や精巣静脈瘤など、泌尿器系の疾患はEDの原因となる
薬剤性ED
薬剤性ED
服用している薬剤の副作用として、EDとなってしまうケースがあります。抗うつ薬や向精神薬などの中枢神経に作用する薬剤や、降圧剤や血管拡張薬などの循環器系に作用する薬剤、ホルモン剤など、様々な薬剤の副作用として、EDが起こりえます。
EDの治療
EDの治療は、ホスホジエステラーゼ5阻害薬(PDE5阻害薬)と呼ばれる内服薬によるものが主流です。
PDE5は、陰茎海綿体内に多く存在し、cGMPというタンパク(一酸化窒素を細胞内に伝える役割を持つ)を分解する酵素です。PDE5阻害薬は、PDE5の作用を阻害することで、陰茎海綿体内のcGMP濃度を高めることにより、陰茎海綿体の血管平滑筋の弛緩を促し、海面体内に大量の血液を流入させる結果、勃起状態を促進し維持させます。
現在、日本では、シルデナフィル(バイアグラ)、バルデナフィル(レビドラ)、タダラフィル(シアリス)という三種類の薬剤の使用が可能であり、三剤ともに十分な有効性と安全性を示すデータが報告されています。
薬剤の種類によって、内服すべきタイミングや効果の持続時間が異なるため、患者様のニーズに合わせて選択していきます。
バイアグラ | レビトラ | シアリス | |
---|---|---|---|
内服のタイミング |
性行為の約1時間前 空腹時は30分前 |
性行為の30分前 早い方は10分前でも可能 |
性行為の1時間から1日半前 |
効果持続時間 | 3~5時間 | 5~10時間 | 約36時間 |
食事の影響 | 普通食でも効果低下 | 高脂肪食で効果低下 | 食事による影響はなし |
効果の強さ | 50mgで強 | 20mgで強 | 中等度 |
ED治療薬は催淫剤とは異なるため、外部からの刺激や性的興奮無しで勃起することはありません。PDE5阻害薬の主な副作用は、頭痛、ほてり、消化不良、鼻閉、めまい、眼症状、背部痛などですが、いずれも軽度で一過性です。
一方、NAION(非動脈炎性前部虚血性視神経症)や突発性難聴など、不可逆性の危険のある副作用も、頻度は低いですが報告があるため、注意が必要です。なお三剤とも、服用中の飲酒は、適量であれば問題ありません。
また、いずれの薬剤も、硝酸薬との併用は禁忌です。硝酸薬が代謝されることにより、NO(一酸化窒素)が過剰に生成され、全身の血管拡張と著明な血圧低下を引き起こす可能性があるためです。
しかし、硝酸薬を使用している方の主治医に、ED治療のため硝酸薬の中止が可能かどうか打診したところ、約4割の方が硝酸薬を中止できたというデータもあるため、硝酸薬内服中でED治療を検討している方は、硝酸薬の中止が可能かどうかを、一度主治医に確認してみることをお勧めします。
循環器系の疾患などにより、ED治療薬が内服できない場合は、陰茎海綿体注射(プロスタンディン)や陰圧式勃起補助具による治療も行われます。また、心理療法やカウンセリングが有効である場合もあります。
PDE5は、陰茎海綿体だけでなく、肺動脈平滑筋にも広く分布しています。PDE5阻害薬は、陰茎海綿体と同様の機序で、肺動脈を拡張し血管内圧を低下させるため、肺動脈性肺高血圧症にも効果的です。
EDに関するQ&A
何事にも気力がわかず、体のだるさがあり、性欲がわきません。どうしたらいいでしょうか。 | |
男性更年期障害の疑いがあります。血中の男性ホルモン値を測定し、もしも低下があるなら、男性ホルモン補充療法を検討します。低下していなければ、男性ホルモン補充療法の適応にはなりませんが、漢方治療が効果を示すことがあります。現在の状態は、東洋医学的には気虚と呼ばれる状態(本来ある全身のエネルギーが不足している状態)です。補中益気湯という漢方薬が有効です。 | |
健康診断の心電図検査で、期外収縮があると言われました。ED治療薬の内服はできませんか。 | |
まずは、循環器内科で期外収縮の検査をお勧めします。期外収縮の原因疾患には、狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患や、心臓のポンプ機能の低下など、様々なものがあります。また、心臓には異常がなくても、精神的ストレスや肉体的ストレス、睡眠不足などでも期外収縮の波形を示すことがあります。循環器内科での診断の結果、治療の必要の無い期外収縮であれば、ED治療薬を飲んでもとくに問題はありません。 | |
3年前に心筋梗塞を起こし、冠動脈ステント術を受けましたが、その後、勃起しなくなりました。ED治療薬を内服してもよいでしょうか。 | |
亜硝酸剤の内服を現在行っておらず、運動制限もとくに無ければ、ED治療薬の内服を行っても問題ありません。心筋梗塞発症後6ヵ月以内である場合は、ED治療薬は勧められませんが、今回のケースは3年前の発症とのことなので、当てはまりません。バイアスピリンなどの抗血小板剤や、ワーファリンなどの抗凝固剤と、ED治療薬の併用は可能です。 現在、降圧剤や利尿剤の内服をしているのであれば、薬剤性のEDである可能性もあります。 また、亜硝酸剤の内服を行っているケースでも、主治医に亜硝酸剤の服用を中止できないか確認すると、中止できる場合もありますので、一度ご相談されてみることをお勧めします。 |
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徐脈性不整脈のため、ペースメーカーが入っています。今は安定した状態ですが、ED治療薬を内服してもよいでしょうか。 | |
ペースメーカーや植え込み型除細動器(ICD)は、ED治療薬内服の禁忌項目には含まれておりません。現在の心機能が安定しており、循環器内科の主治医から運動制限を指示されていなければ、ED治療薬内服は可能です。 | |
最近、知人から、ED治療薬が前立腺肥大症にも効果があると聞きました。本当でしょうか。 | |
本当です。ED治療薬である『シアリス』という薬が、前立腺肥大症の治療薬『ザルティア』として、保険適応になりました。販売名と規格とコーティングが異なるだけで、中身はシアリスと同じ一般名『タダラフィル』という薬剤です。 元々シアリスは、他の二剤と比べて効果の持続時間が長く、ED以外の疾患にも効果を示しやすい薬剤です。前立腺尿道平滑筋に分布しているPDE5の働きを阻害することで、尿道平滑筋を弛緩させ、排尿障害を改善します。頻尿や残尿感などの、前立腺肥大症による症状がEDの原因となっている場合も多いので、前立腺肥大症とEDの同時治療によって、一石二鳥の効果が期待できます。 海外では、すでにザルティアの定期内服は承認されており、血管内皮細胞の保護作用により、動脈硬化の進行を抑制するというデータも集まりつつあります。 |
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ED治療薬を試してみましたが、効果がありませんでした。他に治療法はありませんか。 | |
ED治療薬の内服の指導(服薬のタイミングや食事に関する注意)は受けられましたでしょうか。ED治療薬の効果が無かった方の中で、4割の方が、服薬指導を再度受け、きちんと内服することで、EDが改善したという報告があります。 もし、正しい服用方法でも効果がないなら、まずは、血管性EDの診断のために、血管拡張剤(プロスタンディン)を用いて、勃起可能かどうか反応を見ます。勃起可能でしたら、陰茎海綿体にプロタンディンを自己注射する方法があります。有効性が高いというデータがあるのですが、残念ながら日本ではまだ未承認です。 その他に、陰圧式勃起補助具(VED)を用いる方法があります。陰茎を筒状のシリンダーに入れ陰圧をかけ、陰茎内に血液が集まるよう吸引したあと、陰茎の根元にゴムバンドを巻き、血液を滞留させることで、擬似勃起状態(生理的勃起とは異なる勃起)を起こします。薬剤無効例でも確実性の高い方法ですが、バンド締め付け時間は30分以内が適切となっています。2005年4月の改正薬事法において、陰圧式勃起補助具は、医療機器の分類上クラスⅡ(厚生労働省の製造販売承認が必要な管理医療機器)となっています。 血管拡張剤による治療も、陰圧式勃起補助具による治療も、自費診療となります。 |
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インターネット通販でED治療薬を購入しましたが、服薬しても大丈夫でしょうか。 | |
インターネット販売でのED治療薬は、偽造品がとても多いです。ED治療薬は、医療機関でのコストが高いことと、受診することへの羞恥心から、インターネットで購入しようとする方が多く、そのため、悪徳業者による偽造薬品販売事業の大きなターゲットとなっています。薬効成分が全く含まれていない薬剤も出回っておりますが、外見上は本物と区別がつきません。また、汚染物質や健康被害をもたらす薬物が含まれていたとの調査報告もあります。 インターネットでの購入は、絶対にやめてください。医療機関で処方してもらうことを強く勧めます。 |
ED治療は、知識を伴わない状態での内服では改善しないケースも多いです。また、心血管系の合併症のある方は、持病の循環器系内服薬との組み合わせによっては、命に関わる場合があります。自己判断で内服せずに、適切な服薬指導を受けましょう。
また、治療に支障が無いにも関わらず、年齢によるものだから仕方がないと諦めてしまっている方も見受けられます。EDの発症には様々な要因があるため、個々の患者様に合わせた治療が必要となります。
どうか、一人で思い悩まず、専門医を受診してください。当院では、日本泌尿器科学会専門医と日本性機能学会専門医の資格を有する院長が、豊富な経験の元、EDの診療を行っております。
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